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それはすぐに判った。
おおきく広げられた翼は艶やかな蒼い鱗に覆われて、光るものなどないこの世界にひと滴落された青空のようだ。
ぐうっと伸ばされた首の先で小さな頭が天を仰ぎ、大きく裂けた口が開いて雷鳴のような遠吠えをたなびかせる。
その響きに、きりっと胸の奥が痛んで深緑色の上衣の胸元を掴んだ。
鋭く輝く、恐らく嘗て彼が手にした剣よりも容易く天地を裂くであろう爪をぎゅうとその手のひらへ隠し、大きな身体をちぢこませるように項垂れたその姿。
まるで、ちいさくちいさく、誰の目にも触れないように隠れてしまおうとするかのような。
そっと、手を伸ばした。
珍しく露わな指先で触れると、ざくりと堅牢な竜鱗が皮膚を裂く。じくり、と感じた痛みが熱になって、つぅ…と肘までを滑り降りる。
けれど、いま佇むポップの前で蹲る蒼竜は気付かない。
陶磁のような色をした皮膚を、薄く付いた肉を傷付けることも構わずに、伸ばした腕でそっとそのひと抱え以上ある頭を抱き締めた。
これほど近くにいても、ポップの気配にダイは気付かない。気付けない。

いま、ここにいるのは幻。
遥か遠い、未来を一瞬だけ垣間見る術は完全には発動せず、実体も実感も伴うことが出来なかった。
いや、もしかしたらこれは自分が見ている都合のよい夢かもしれない。
ダイを失って既に2年の月日を過ごして、壊れかけた心が縋った虚無の仮想かもしれない。
けれど。

「…泣くな」

きっと、聞こえない。伝わらない。それでもいい。
淡く発光する、薄蒼い鱗に覆われた目蓋の丸みへ頬を寄せる。

「……おれが、辿り着くから」

薄暗い地の底の、腐肉色をした大地で震え泣くお前をきっと、抱き締めにいくから。

「逃げなくていい、隠れなくていい。」

微睡んでいるのだろうか。
大きな竜の咽喉奥から、ぐるぐると轟くような音がする。

「お前がどんな姿になったって、ダイはダイだ」

嘗て大魔宮で告げた言葉を囁いて、その額へ唇を寄せた。
せめてその眠りに僅かでも安らぎが燈るようにと共に旅したころそっと眠る子供に施していたおまじない。

「だから、泣くな」

いま、眠るお前の夢に僅かでも癒しが宿るようにと祈りながら。

【続】

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memo話の続きもので、【変化】のポップ編です。


きゃあきゃあ!柴崎さんちの優しく一途なポップさんが、うちの竜になったダイに救いの手を差し伸べて下さいました〜〜〜v
なんて深くて切ないポップの愛情っ。

うちのポップとは優しさ度が違います。
さらにこの後、ポップはダイの為ある行動にでるとの萌え設定までいただき、
悶えまくり、その設定にて続きを書く事をお約束したので【続】となってます。
柴崎さん素敵な続きありがとうございました〜〜〜v


>ルドルフ。

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2010.4/30

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