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【思い出の形】

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暦の存在も知らずに育った俺には、年月の感覚自体があやふやで、よくわからないんだけど。
おまえと一緒にいられた時間は、長かったようで意外と短かったのかもしれない。
それでも、毎日いろんなことが盛りだくさんで。
苦しいこと、辛いこともいっぱいあったけど、おまえの隣で本当に楽しかったんだ。

初めての人間の友達、レオナに会って。
アバン先生とおまえに会って。
勇者を目指して夢中でがんばった日々。

一緒に冒険を始めたころのおまえは、本当に頼りなくて。
逃げ出しちゃうことばっかりだったよね。
あの頃を思い出すと、つい笑ってしまう。

それがいつの間にか、誰よりも俺のことをわかってくれるようになって。
俺の隣で、ずっと支えてくれて。
全てに絶望したときですら、立ち上がる勇気をくれたね。

おまえが隣にいてくれたから、バーンとも闘うことができたよ。

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今、俺がいるのは魔界。
黒のコアの爆発のあと、気づいたときにはここにいた。
太陽がない世界。
あの蒼い空、まぶしい光がない。
もちろん、鮮やかな緑も。
その違いで不安にさせられたけれど、出会うモンスターや魔族は、荒っぽい割に話のわかるやつばかりだったから、
こっちでの生活にも大分慣れてきた。
バーンの脅威は去っても、魔界にはヴェルザーをはじめ、地上を狙ってるやつらがたくさんいる。
そう知って、魔界で闘おうと決めた。
おまえが俺と同じ立場だったら、きっとこうすると思ったから。

もう二度と会えないかもしれない。
それでもいいと思っていたんだ。
俺は竜の騎士。
きっと地上を護るために、ここへ来たんだから。

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…そう納得したはずなのに。
おまえに会いたい、と思ってしまうのが俺の本音。

こんな胸が痛むような苦しさは、今まで知らなかった。
もちろん、じいちゃんやレオナ、マァム、クロコダインにヒュンケル、アバン先生……
地上に会いたい人はたくさんいる。
けど、泣きたくなるくらい会いたくなるのは、おまえだけなんだよ。
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俺を呼ぶ声。
頭をくしゃっと撫でられる感触。
くるくると変わる表情。
魔法を使うときの真剣な眼差し。
俺の前に立って、必死で守ってくれた背中。
グシャグシャな泣き顔。
俺を振り返って見せてくれた、笑顔。

覚えているんだ。
怖いくらいに。
おまえの仕草、存在の全てを。

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いつでも、おまえなんだ。
思い出すのは、おまえのことばかり。

――どうして、なんだろう。

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地上にいるおまえの姿が少しでも見えたらいいのにと思いながら、俺は魔界の闇い空を見上げた。

〈了〉

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うたげ様よりいただきました!

自分の「ダイポプに飢えてる読みたい〜〜」との叫びになんと、こんな切なく可愛いSSを下さいました〜!
やったね!言ってみるもんだ!(ニヤリ)
まだ恋愛未満で、でもポップが大好きなダイが、きゅんきゅんするほど可愛いです。

HYの「366日」とゆう曲より思いつかれたそうです。

タイトルがなかったので、恐れおおいですが付けさせていただきました。

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うたげ様!ありがとうございます!!

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>ルドルフ。

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2009/3/5

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