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メモログ「紙束」の続きを頂きました。

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     【羅列】

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ようやく見つけた。
やっと、会えた。

伝えたい言葉は山ほどあったのに、すべては感情のたかぶりに押し流されて。
咽び泣くことしかできなかった。

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そもそも俺はクールなんかじゃない。
仲間を守るために、必死でそうあろうとしていただけだ。

クールになれ。クールに。

何度も心の中で呪文のように繰り返して冷静さを保っていた。

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ダイを捜す旅。
魔の地は信じられるものが何もない。
闘いの連続で、常に精神を研ぎ澄まし、感情を押さえ付けていた。
その反動で爆発したものを、ダイにぶつけるようにして飛び付いて抱きしめた。

ダイも泣きながら抱き返してくれた。
苦しいほどの締め付けにも嬉しさが込み上げ、さらに涙が止まらなかった。

「…ポップ…ッ」

搾り出すように耳元でささやかれた声。
聞き慣れない声。
だけど、ずっと聞きたかった、声。

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ダイ。

会いたかった。

ずっとずっと探してた。

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ダイがこの地で拠点にしていたという建物に連れ立ち、一つしかない寝台の上で、
二人で寝るには狭いだとか、オマエがデカくなりすぎだとか、
あの頃と同じように大騒ぎして笑い合いながら、隣にある温もりに安堵して眠りについた。

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朝かどうかわからないが、目が醒めると、目の前にはまだ見慣れぬ男の顔。
ぐっすりと深く眠り込んでいる姿に苦笑して、辺りを見回す。

ふと、部屋の片隅に積まれた、古びた皮紙の束が目についた。
ダイが何かを読んだり書いたりするハズがないから、前の住人のものだろうか?
ダイを起こさないように寝台からそっと抜け出し、何が書いてあるのかと興味津々でめくって……言葉を失った。

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皮紙に書かれていたのは、たどたどしくて、ところどころ間違いのある文字の羅列。

何度も「違う!」と教えては、すぐ頭から煙を吹いていた子供の姿が脳裏に浮かび、口元が緩んだ。

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…覚えてたんだな…

ダイが自発的に字を書くということが、余りに想像できなさすぎて、声を立てずに笑ってしまう。
はじめは、日常のささいなことを書いた日記だと思った。
読み進めていくうちに、紙を持つ手が震えた。

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綴られた言葉は、全て俺に向けられていた。

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俺には届かないと諦めながら、それでも書かずにはいられずしたためられたものだった。

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「…………っかやろ………ッ」

小さな呟きは、また鳴咽に変わる。

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諦めてんじゃねぇ!と、書き綴った当時のダイをぶちのめしたい衝動にかられた。
でもその怒りは、そう思わせてしまった自分への憤りで。

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――遅くなっちまってごめんな。
もう、離れねぇから。

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紙を元の場所に戻し、何も気付かないふりをして、まだ目覚めないダイの隣に潜り込んだ。

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――――人目に触れて。

行き先の無かった文字の連なりは意味を持ち、

今『手紙』に変わる。

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【終わり】

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うたげ様より
【紙束】の続きで、すんごいハッピーエンドな補完SSを頂きました〜〜〜!

あまりのポップのオトコマエぶりにめっろめろですvvv

お陰様でダイが幸せになれましたよ!

僭越ながら、【紙束】と対でアップに当たり、
タイトルと追文をつけさせていただきました。

本当にありがとうございます!

〉ルドルフ

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2009/6/1

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