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10000hit御礼

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【reverseside of the moon】

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完全に締め切られていない透き間から差し込み、部屋を糸のように横切る細く淡い光。

昼の陽よりずっと弱いそれさえ、今の自分には強すぎる。

肺腑の奥から熱く湿った息を吐ききる。
腹の奥から響くような波動の鼓動に耐えて、両の指は横たわるシーツを握り締め
掻き抱く。

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制圧出来ない力は溢れ出て冷気の様に部屋の空気を烟せた。

.あ…ぐ…」

噛み締めた歯の根、喉の奥から擦り切れた声が漏れた。

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涙が滲んだ瞼をきつく綴じれば、一筋。
冷たく凍え切った頬を生理的に溢れた水が伝って落ちた。

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「……く、うっ」

待ちわびる夜明けは遠く、月は高い。

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見なくても分かる。

今宵は満月。

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月日を重ねる毎、

この身を蝕む力は際限なく膨らみ、それに自分は対する術を持ち得ない。

器は既にひび割れていて、
内から溢れる体積に耐えられない。

いずれ、崩壊するだろう。

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「…ィ」

呟きに震えた後ほつり、と真白なシーツに雫は染み込んだ。

「辛い?」

月の波動とは別の旋律を体内に送り込む影。

「…ねぇ、言ってよポップ」

「う…ぁ」

昔、その同じ手は震える怯えを触れるだけで宥め止めてくれたのに。

今はこうして苦痛を伴う熱を煽る。

何がどこで、狂ったのだろう?

俺達は何時の間にか狂ってしまった。

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月は無常に駆り立てて。

高みの波に攫われ果てた。

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「満月の時のポップってさ、凄く…違うよね」

崩れる体を強い腕で引き留められる。

「もう一度、だよ」

耳元で呟かれ背筋が粟立つ。

腰を掴まれ奥まで灼熱の芯に貫かれた。
最奥に先端部分が突き当たり、掻き乱出され

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「あああっ」

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高い悲鳴を上げる自分は他人の様だ。

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何処か遠い世界のことのように、朝になれば消えて去るに違いない。

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溢れ零れる魔力も、

荒く肌を探るダイの怖いほどの熱も、

受け止め嫌ではないと感じる自分も、

何もかも

何もかも

なにもかも。

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月のせいにして。

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【終】



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2008/10/08

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