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この部屋の話は、世界設定、性格捏造、文章崩壊、お馬鹿でたまに下品です。
キャラのイメージを壊したく無い方はお避け下さいませ。

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「みんな、少し休憩しましょう、根を詰めすぎるのも良くないわ」

ポップの血迷った一言がもたらした氷河期に硬直化した臣下一同を見渡しながら、
レオナは一転、労う笑みを浮かべた。

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「三十分ほど小休止とします」

正直ポップのみでなく、缶詰め状態にストレスが
卓上の書類と同じくらい堆く積もっていた面々は、女王の英断に感嘆の吐息を漏らした。

レオナが手元にある小さな金製の呼び鈴を降ると、直ぐに隣接した部屋からマリンがやって来る。

「隣の部屋にお茶を用意して」

「はい、姫さま」

「みんな、寛いで頂戴。あ、ポップくんは少し残って貰えるかしら?」

「………おう」

こっそりと真っ先に抜け出そうと、部屋の扉へ向かって手を伸ばしていたポップは、
背中へ掛けられた声にびくりと哀れなくらい飛び上がる。

恐る恐る振り返った先には、美しくも刺すような氷の微笑を浮かべてたレオナがいた。

そして憐れみの視線を数多ポップに向けながら皆が席を立ち、マリンに促され隣室へ移動した後、
ポップは二人切りになる部屋の扉が閉まる音を、絶望的な思いに聞いた。

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「えーと…姫さん、さっきのは別にそうゆう訳じゃ…」

しどろもどろに言い訳じみた台詞を口にする間、背中やら膝裏にやな汗が流れる。

今までだって、ついウッカリもらした余計な一言で、お返しが万倍の厄介事としてこの身に降り懸かって来たやら…。

権力に屈する性根は持ち合わせていないが、
単純にこの大胆豪快かつ、有言実行の美姫の怒りが恐ろしい。

「どーゆう訳かなんか、問題じゃないの」

二人机を挟んで向かい合って、
レオナは思いがけず、あまやかな美声を発した。

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「ちょっと聞きだい事があって、確かめたいだけ」

「……??」

執務室の顔が映り込むぐらい磨かれた卓上に両肘を付いて、顎下に白魚のごとくしなやかな指を添え支える。

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「男の子ってやっぱり大きい方が好きなの?」

「……は?」

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質問の意図が、とゆうか意味が本気で『?』マークだったポップは、
思い切り間抜けな顔をする。

「……」

「…えと、何が…?」

「ナニがじゃ無いわよッ…胸よ胸!」

じれたレオナが、ダン!とたおやかな手を握り拳にして机を叩いた。

「うええぇっ!?」

「正直に答えなさい」

目力が真面で恐い。

「そりゃあ男は誰だってみんな…」

「誰でもみんな?ダイくんも?」

「あ、いや、ダイは違うかもしんねぇ!」

慌ててポップはレオナの想い人、
図体がデカくなってもお子様な親友兼勇者を思い出し答えた。

「でもポップくんは?」

「…大きいほうが好きデス…」

「何で?」

「…そりゃあ大は小を兼ねるっつうか…触り心地ってか…」

「ふぅん、そう」

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なんだこの羞恥プレイは?!とポップは心の中で叫んだ。

何が何が悲しくて自分の性癖を、
うら若い美人、しかもよく知れた仲間に問い詰められなければならないのか。

恥ずかしいやら居たたまれないやら。

最初より更に汗だくになって、ポップはリレミトで城から逃げ出したくなった。

「じゃあやっぱり…可能性はあるわね…」

フルフル羞恥に立ち尽くすポップなどほったらかしで、
レオナは一人物思いに沈んだ。

そして突如実務机の鍵が付いた引き出しを開けると、
そこから重厚な細工造りで古めかしい小箱を取り出した。

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「ちょっとポップくん、あなたに頼みたい仕事があるの」

「??」

「これは秘密裏に代々パプニカの王家、女性にのみ継がれてきたアイテムよ」

そう話ながら箱の表面に埋め込まれた宝玉へ指先を触れさせ、レオナは僅かな魔法力を注ぎ込む。

するとカチリと小さな音が内部からして、蓋がゆっくり開く。
どうやら指定された血筋の魔法力のみに反応する、手が込んだ仕掛け箱のようだ。

先程までの逃げたい衝動をすっかり忘れ、
ポップは興味に駆られるとレオナの手元を覗き込む。

其処には上等な絹に護られた小さな小瓶が1つ。

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「何だい?これ」

「秘宝中の秘宝、禁異の薬…これをあなたに見せるからには、口外法度は命に賭けて守ってもらうわ」

凄みあるレオナの真剣さに、ポップは気圧されつつ頷いた。
「これを使うなんて…したくなかった」

「まさか、惚れ薬とかかよ…?」

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流石に眉を潜めてポップは異を含ませた声になる。

確かに八方美人で誰にでも受けがいい鈍いダイを、自分一人に振り向かせたいレオナの気持ちは良く判る。

かつてポップも誰にでも平等に慈愛を注ぐ少女へ恋をしていて、その甘く歯痒い思い出があるから。

しかし、それをいくら思い通りにならないからと言って、
薬で本人の気持ちをねじ曲げたとして、
結局一番傷つきのはレオナだろう。

ポップにとって、レオナもダイも大事な存在だ。

結果的に二人が、不幸な事に成るなんてのを見過ごせやしない。

しかしそんなポップの危惧を、アッサリとレオナは否定した。

「惚れ薬?何故この私がそんなものに頼らなきゃならないの?」

「え?じゃあソイツは一体…」

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「豊胸の魔法薬よ」

「………は?!」

ほうきょう?

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聞き慣れない単語に目が点になってるポップを置いてきぼりにしたまま、
レオナは一気に感情が爆発したように天井に向かってまくし立てた。

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「だって!ダイくんたら魔界から帰って一年間、この私が色々アプローチしても何時までたっても、そんな気全くちっとも出しやしないんだものッ!!何?私に女の魅力が足りないわけ?そんな訳ないわよね!美貌も知性も兼ね備えて華も私には恥じらい道を退く二十歳なのよ?じゃあこの私にいったい何が不足していてダイくんは不満だってゆうの―――ッ!!」

「ひ、姫さん落ち着けって!」

「わたしは…至って…冷静よ…っ」

ゼーハーと乱れた呼吸を整えながら、レオナは美しい金髪を片手で肩に払い、鋭い視線でポップを睨んだ。

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(あの冷静沈着な姫さんが…そっか、もう二十歳だもんな。そりゃあ焦るよな…)

庶民は兎も角、王族の姫の二十歳と言えば、世間的には行き遅れの域に入りつつある。

一年前、ポップがダイと共に魔界から戻り、
当然のようにずっと帰りを待ち独身を貫いていたレオナとダイは、
直ぐにでも結ばれるだろうと思っていた周囲の予想を裏切って、
ダイは普通の仲間の一人としてレオナに接した。

それはダイがまだまだ精神的にお子様で、しかも長い間魔界とゆう過酷な環境下で戦い続けていた事により、そう言った方面の成長が追い付いていないだろう事も考えられた。

だからこそレオナは、騎士団長に任命したダイを連れてパーティーに出たり、旅行に行ったり、はたまた部屋を隣接までした。

此処まで据え膳されても、ダイとの恋愛的な要素は全く進展しなかったようだ。
そしてあっとゆう間に一年が経つ。

最近は時期的な忙しさからダイと会う時間も減っていた。

このまま流されるままに月日が過ぎて行くなんて、本当は嫌だ。

こうして責務に追われているとき、ふと不安がレオナの胸中を絞めつけた。

その内どこぞの鳶に油揚げを浚われてしまうかも知れない。

「そんな事絶対許さないんだから」

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缶詰での激務にぷっつんと切れていたのは、実はポップだけでは無かったとゆうことで。

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「で、ソイツで何とかなんのかよ?」

「ダイくんはお母様を知らないでしょう?」

「ああ、赤ん坊んとき引き離されちまったんだよな」

「なら、きっと包容力あるものに弱いはず、でなければこの完璧な私に足りないものはただ一つよ」

「まさか姫さんそれで胸を…」

やっとレオナの目的に思考が追いついたポップが溜め息を吐いた。

「そう、この私の溢れ出る母性に骨抜きになるに違いないわ!」

「溢れ出る、ねぇ…」

確かに豊かな胸は母性の象徴だろうが、肝心のレオナが勇猛果敢な精神の持ち主なのだから、
果たしてその作戦も上手くゆくかどうか。

しかし、ポップとて二人の幸せを願う気持ちに嘘は無い。

「で、俺にそいつを見せた意味はなんだい?」

「流石、話が早いわね」

もしレオナが躊躇なくその魔法薬を使うつもりなら、わざわざポップに秘密を明かす必要など無いのだ。

しかもプライドが高いレオナがである。

それをポップは承知して役目を聞いているのだ。

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「この魔法薬…パプニカ王国の歴史が始まって来引き継がれてはいるものの、実は只の一度も使われた事が無いのよ」

「へ?」

「だからポップくん、コレが本当に安全でかつ効果があるか、成分を調べて頂戴」

「えええ?!」

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「この忙しい時期ポップくんに負担をかけることは判ってる、でも私はもう待て無い…」

未来への陰が美貌を曇らせる。

「姫さん…」

「無論タダとは言わないわ」

真剣な面を上げたレオナは、小箱が仕舞われていた引き出しと同じ所に収められていた物を引っ張り出した。

「これよ」

ぴらりとレオナの細い指先に摘まれた一枚の紙。
ポップの顔色がサッと変化した。

疑心から驚愕へ。

「そ、そいつはまさか…っ」

ゴクリとポップは空気を嚥下する。

「そうよ?この空欄にポップくんの望むだけの数字を書けばいいわ…どう?」

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婉然と微笑むレオナが、ポップの表情の顕著な変化に満足げに頷く。

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「担いでんじゃねーよな?」

「パプニカ王女の名に賭けて、私に二言は無いわ」

フルフルと感動に震えながら伸びてきたポップの両手から、お預けとばかりに紙を遠ざける。

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「欲しかったら…解ってるわよね?」

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「お…おう!大魔道士ポップ様に任しときな!」

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勢い良く廊下を自室に向かって歩みながら、
ポップの気合いは、かつて大魔王バーンに戦いを挑んだ時より久しく高ぶっていた。

レオナより預かった右手に握る魔法薬の小瓶に、目を落とす。

「コイツが本物か確認出来れば…俺に幸せが待っているんだ」

(ぜってー欲しいっ何としても手に入れてやるぜっ)

キリリと表情を引き締め、固い決意に顔を上げた。

…パプニカ王宮に現存するものの、何故か歴史上一度たりとて受理された形跡のない幻の書類。

(あの、幻の有給休暇届け用紙ッ!!!)

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「あいつがあれば半年だろうが一年だろうが公認で休み放題だぜ!久々に旅に出てみるのもいいよなぁ」

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金でも地位でも無く休みが何より欲しいポップ21歳、若人にしてはささやか過ぎる願いだった。

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→続く。



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2008/11/5

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