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この部屋の話は、世界設定、性格捏造、文章崩壊、お馬鹿でたまに下品です。
キャラのイメージを壊したく無い方はお避け下さいませ。

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ダイは衝動に任せてポップを引き倒しても、怪我をさせるようなマネはしない。

その頭や背を硬い石の床へ打ち付けない様に素早く左腕を回し、支えにした。

必然的に抱きかかえる格好で二人は床に倒れた。

「いってぇ!」

しかし衝撃は完全に殺せず、ポップは尻餅をついた痛みに非難の声を上げる。

「ナンだよ急に…っ」

腰をさすりつつ、自分の体を跨ぐように上になっているダイを睨みつけた。

しかし当のダイはそんなポップの視線を意に介さず、逆にやたら熱のこもった瞳に見返されポップはたじろぐ。

「ポップ…」

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スルリとシャツの下から忍び込んできたダイの右手が、
へそのラインを上に登って迷い無く確かめる様に皮膚をなぞる。

他人の手が肌を這う初めての感覚に、ポップはびくりと跳ね上がった。

「うわ?」

ぞわぞわと鳥肌が背筋を駆け上がり、ポップは驚いて四肢をバタつかせた。

「な…っ?!」

(あれ?何やってんだ俺達。何だこの状況??)

ポップの至極当然な疑問がまだ解されない内に、どんどんダイの手は大胆になってゆく。

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「ま、まて待て…っダイっ何やってんだッ!」

「温かいね」

「そーじゃなくてよ!や…っ手を動かすなっ」

手首を掴んで止めようとするが、力でかなうワケもなく、
その剣を握り続けたために硬くなった皮膚を持つ大きな手の指先が、直に膨らみへ到達した。

「うわっ!!」

強く掴まれるとまるで鈍痛の様な感覚がある。
胸がこんなに感覚がある場所だなんて、無論だが初めて知った。

「つっ………ッ!!」

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「あ、ごめん、強かった?」

手のひらを緩めると、今度は指の先で形を確かめるように撫でて来る。

「強さとかじゃ無く…ッやめろ…っ!」

確かにさっきポップも好奇心から触ったりしてみたが、
自分と他人が触れるのではワケがちがうし、
これは悪戯にも程がある。

叱りつけようと、身体にのしかかるダイを見上げて睨み付けたが、
恥ずかしさに朱に染まった顔では迫力が無い。

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「ね、ポップ教えてよ」

「な…何をだよ」

まだ状況が判ってないポップを、ダイは愛情と熱のこもった眼差しで見下ろした。

「ポップの事全部知りたい」

「はあぁ?!」

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混乱状態のポップが質問の意味を反芻して理解する前に、
今度はポップの頭を床に下ろし
空いたダイの左手が、シャツの合わせ目に掛かる。

大きくせり上がった普段無い胸の小山のせいで、
シャツは釦から元より半分取れかかっていたので、片手でも簡単に外せた。

ポップとてされるがままになっていた訳でなく、
途中で何とか阻止しようとダイの胸板を突っぱねたり手首を掴んだりしたのだが、圧倒的な力の差は如何ともし難たかった。

それで今は、両手でシャツを胸元に引き寄せ最後の砦を死守していたため、却って他が無防備になる。

すんなりと長い首から鎖骨、さらに陽から遠ざけられた白い両肩が暴かれダイの目の前に晒される。

眩暈がするほど惹きつけられて、ダイは首筋に唇を落とした。

「これでもまだ、悪戯だと思う?」

そこにポツリと跡が残る程強く口付けられて、初めてポップはダイの意図する所にたどり着いた。

(えーと、つまりは作戦としては成功なのか!?コレっ!?)

ポップは、ダイが、
《母性溢れる豊乳ぱふぱふによって、男としての本能に目覚めて火が点いたゆえの暴走。》
と思い至った。

それも大きな勘違いだったが。

「ばかっ!!とち狂うなっ正気にもどれ」

「俺は正気だよ」

「それにっ!今は胸あるけど俺は男だぞっ!」

「知ってるし、構わないけど?」

「そーでなくて!お前の相手は姫さんだろーがっ」

「…なんでレオナ?」

「なんでってお前と姫さんは好き同士だろうがよ!?」

さっきはダイを胸へ押し付ける為にクロスされた両腕は、
今ダイを拒んで自分のシャツを守る為に堅くクロスされている。

そんな頑なな拒否は、ダイを少し傷つけた。

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「…俺が好きなのは、ポップだよ」

「へ?」

でなければ男と知ってて、普通こんな事はしないだろう。

ポカンと口を開けたまま、ポップが自分を見つめてくる。

己に向けられる愛情には、相変わらず鈍感な純朴さがポップらしくて、
ダイはふと笑む。

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「だから、好きなんだってば」

左掌でポップの顎を上げ逃げられないよう固定し、ダイはゆっくりある意図を持って顔を近付けてくる。

「ダ…イっ!?止め…、駄目だっ!!」

レオナの傷ついた顔が脳裏を過ぎり、何故こんなに早鐘の様な動悸がするのか理由も判らぬまま、
ポップは泪目で懇願し続けた。

「あ…っ!」

ダイの吐息が否定を生むポップの唇を掠め、塞ぐ直前。

ダイは長年の念願が叶う歓喜に、鮮やかな笑みを口端に浮かべた。

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「ア………っ ア ス ト ロ ン ッ !! 」

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(――――はい!?)

突然体の自由が利かなくなったダイは、
パチクリと瞬こうとしたがそれも出来ない。

鉛色に衣服ごと変化…つまり鋼鉄化していた。

「こんの莫迦っ!」

アストロンによって固まったダイの下からにじにじと這い出してシャツの乱れを直すと、
ポップは近くに積み重ねてあった分厚い魔道書の角で、思いっ切りダイの頭をぶっ叩いた。

まあ、あらゆる攻撃から身を守る防御呪文によってダメージは全く与えられ無かったが。

「ポップ〜〜〜酷いよ」

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さっきと打って変わって子供の様に眉を下げ、切ない声を上げた。

ポップは条件反射でチクリと胸が痛んだが、
慌てて首を振り態と冷たい怒りの表情でダイを見下ろした。

今やこの親友は、子犬に見えて狼なのだから。

「ダイ、よくも好き勝手してくれたな」

正確には好き勝手しようとする前に阻止したが。

制止の声も、ポップの意志も関係ない様に推し進めようとしたダイに、
ポップは言い知れぬ怒りが湧いていた。
油断すると涙が出てしまいそうにショックだった。

ダイも、ポップの複雑に歪んだ表情で、深く傷つけた事を悟って、ハッと息を呑む。

「だって…俺…ポップのことが……」

ずっと欲しかったものに手が届く、確かにその喜びで急いてしまったけれど。

気持ちに嘘をつくのは、もう無理だ。

押し留めていた堰は切られた。

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「姫さんの事考えてやれよッ!!」

国務を背負いながらもダイが見つかるまで、気持ちを貫き通し待っていたレオナ。

あんなに強気な少女が、ポップに、他の力を借りてでもダイに振り向いて欲しいと頼み事をしたのだ。
ポップはダイもレオナも大事だから、二人とも幸せになって欲しいと心から思う。

だが肝心のダイがまさか、こんな形でレオナもポップも裏切るなんて思いもよらなかった。

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「でも俺が好きなのは…」

「まだ言うか!」

カッと頭に血が上り、ポップは声を荒げた。

「お前なんか親友じゃねぇ!―――絶交だ!」

勢いで出た言葉であっても、
ダイに取ってとうにポップは親友より濃い存在になっていたとしても、

絶交宣言はギガデインより激しくダイを打ちのめした。

表情を無くしたダイにポップは背を向ける

「そこで頭冷やしてろ、2日位で多分戻るだろうよ…、その頃に俺はパプニカを出てる」

――――本気だった。

二人の幸せに自分が邪魔なら、何処へとでも去っていい…。

そうして言い捨てるように言葉を残し、そのまま離れて行こうとした。

「ポップ…ッポップッ!待ってくれ!!」

ポップを失う恐怖に心が押し潰される。
急激に一年前までいた魔界が思い起こされた。

暗鬱とした殺戮の地世界、気も狂いそうなヴェルザーの闇の力に最後まで屈せずいられたのは、

希望があったから。

ポップが、勇気を、くれたがら。

側に居てくれたからなのに。

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――――なのに、そのポップが自分を見限る。

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「う…ああァッ!!」

閃光が脳内を塗りつぶし、感情を制止出来なくなる。

ダイは湧き上がる熱に意識を任せた。

只、ポップを引き留めたかったから。

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狭い石造りの部屋に暴風が突如渦巻いた。

「ッ!!」

振り返ったポップの目に映ったのは、巻き起こる風の中心に光る竜の紋章。

凄まじい闘気に壁の棚は薙ぎ倒されんばかりに軋み、テーブルの実験器材は吹き散らされた。

ダイが掛けられた呪文を破ろうとしている。

先に入口の結界を踏み越えようとしたような、手加減の力では無い。

本気の闘気だ。

しかも自制を失って表情は消え瞳は何も映していない。

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「止せッ…!!」

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ポップが制止の声を上げたのは保身の為では無かった。

自分の鋼鉄変化呪文は勿論、今館を覆っている結界では、このダイの竜闘気を完全には抑え込めない。

ある程度まで膨らみ、限界まで内側に耐えてから破裂した力は、
放射状に地を走って城や城下町を飲み込み甚大な被害を出すだろう。

それが判らないダイでは無いはずなのに、何故。

混乱の中でポップの心臓はきりきりと痛む。

ダイを、そんな破壊神のレッテルを貼られる存在にしたくは無かった。

ずっと昔、ベンガーナで化け物と人々に遠巻きにされた時の、
ダイの哀しい瞳を知っている。

大魔王バーンに軍門へ誘われた時、
『地上を去る』と、清々しい表情で告げた事をレオナから教わった。

そんな台詞を、二度と吐かせるものかとポップは誓ったのだ。

嘗てその何処までも優しい純粋さで、
己の命と引き替えに地上全てを守ろうとした大馬鹿な、ポップの大事なダイ。

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ダイは勇者だ。

(堂々と幸せを、祝福を受けて何が悪い!)

そう思い魔界からダイを連れ戻した。

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ポップは唇を噛み締めて魔法力を練り上げた。

そして先ず、危険な薬品やアイテムを収納する棚へアストロンをかけた上、ヒャダルコで固定させる。

爆風に乗って此処より外へ中身を撒き散らぬ為だ。

次に自分とダイを中心に結界の範囲を狭めてゆく。

しかし濃縮された闘気に圧倒され、よろめいた先に転がっていた小瓶を踏み砕き、足裏に鋭い痛みが走った。

「くぅッ」

血の匂いに、ダイは一瞬正気に引き戻されたように瞳を瞬かせ闘気の放出が緩む。

その機にポップは抑え込む力を上げた。

「く………そ、ダイのバカやろ―――ッッッ!!」

結界の弾ける瞬間、方向性を操る。

頭上天外に向かって、結界を一部解き穴を空けた。

頑強な館の屋根を吹き飛ばし、真っ直ぐな光の柱が天へ突き抜けて、
まるで火山の噴火の如くに雲を沸き立たせ辺りを地響かせる。

直ぐにその雲は雷鳴を呼んで、パプニカ国全土にスコールの様な雨が降り注ぐ。

多くの国民が城の方角から聴こえた轟音に驚き外に出て、
突如の雨に濡れながら遠く立ち上る煙を不安気に見守った。

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→続く。

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やっと此処まで来れました…。
な、長かったな!

ピンク路線から一気にブラック下降へ。
でもご安心ください、所詮は愚者ですから。

次回はフィナーレです。

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2009/3/23

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