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この部屋の話は、世界設定、性格捏造、文章崩壊、お馬鹿でたまに下品です。
キャラのイメージを壊したく無い方はお避け下さいませ。

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一時的な雨雲は直ぐに散った。

大雨が去った後は、空気が洗われた様に雲は晴れ、
目に染みる程の青空と眩しい太陽光が、
ポッカリ丸く開いた天井から覗いている。

その縁から雨名残の露がしたしたと落ち、ポップの頬を濡らして目覚めさせた。

「あー……いてぇ…」

ぼんやりとした視界に空の蒼だけ飛び込んできた。
まだ頭がクラクラするようだ。

反射的に起き上がろうとしたが体が酷く重い。

瓦礫でも上に乗っているのかとポップは思ったが、退かそうと両手を添えるとその塊は熱を持っていた。

「ポップ、気がついた?大丈夫…?」

「ダイ…」

空の穴から降り注ぐ太陽光を遮って覗き込んできた、心配顔に黒々しい眉を下げたダイは、
アストロンを破りあの爆発の中、落ち掛かる天井の瓦礫から、ポップを守った様だった。

(自分が爆発の中心だったくせに、器用なことをするなコイツ…)

ポップは護られた上に、その腕の中で呑気にのびていた気恥ずかしさを面に出さないよう、
努めて怒りの形相を作った。

「ダイ!この大馬鹿が!危なくパプニカをぶっ壊すとこだったんだぞっ」

「うん……ごめん…」

「ごめんじゃねぇよ!」

「だってポップが俺と絶交するとか言うから」

「俺のせいかよ!?そんな事で…っ」

国を吹っ飛ばしそうになったのかとポップが憤るより瞬間早く、

「そんな事って何だよッ!!」

愁傷な面もちでうなだれていた筈のダイが珍しく眉を跳ね上げ、その怒号が響き渡った。

「ポップは俺と離れても、平気なのかよッ!?俺は平気じゃないのに!こんなに大事なのにッ!ポップは……っ」

雨の名残とは違う、温かい雫がぽつぽつとポップの頬に降りかかる。

「ダイ…」

「…俺のこと…嫌いになった…?ポップの事、好きじゃ駄目なのか?」

ダイは上手く喋れなくなり、最後は消え入りそうな小声になる。

ポップの答えを聞くのが怖い。
だけど、今でなければ、もう二度と聞けない無い気がした。
だから正直な自分の不安を、全て広げて見せるしかない。

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「もう…駄目?俺の隣に…居てくれないのか……?」

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「………」

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ポップの見上げる先には、青空とダイの泣き笑いな顔がある。
いつかの分かたれた遠い記憶と重なり、
ポップはふと気がついた。

こうしてなりふり構わずに何か欲しがるダイは珍しい。
とゆうか初めてでは無いのかと。

ダイはあの時、自分自身だけを犠牲にした。

勇者としてか、竜の騎士との使命だかはポップには解らない。

解りたくなかった。

その一度は別れ、長い間の後に再会した親友。

再び相対した時ポップがダイに望んでいたのは、勇者としての役割ではなく。

使命や、宿業や、血の責務に縛られる事なく。

もっと自由に、自分自身に我が儘を言って生きる姿だった。

そして今ダイは、素直にそうして生きてみようとしている。

(……ここまで必要と言われるのは、ある意味…男冥利に尽きんのかなぁ)

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「………ポップ…?」

ポップの長い沈黙に耐えかねて、まだ涙を目尻に溜めたままダイが小さく名を呼ぶ。

その声にじろりと、眉間に皺を小難しく寄せて、ポップは何処か恨めしげに上目使いな視線をダイに向けた。

雲母の如く深い黒の瞳は、今ダイの戸惑った顔だけが映り込んで。
どきりとダイの心拍が一段と高く跳ねた。
このままもう少し顔を落とせば触れ合えそうな、
近すぎる距離が魅惑的だった。

振られたと解っていても、ダイは今この自分を見つめる《ポップ》が誰より好きだ。

自分が半分人間じゃなくても、認めて抱き締めてくれた存在者。

ポップを想い湧き上がるのはずっと昔、レオナに感じた優しい温かさではない。
焦げ付き乱暴になりそうな烈しい焔で、ダイ自身さえも持て余す、先程の様に。
失われたら、気も狂わんばかりに。

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――――隠しきれない悲哀と激情を滲ませたそんなダイの泣き顔を見上げながら、
ポップは静かに口を開いた。

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「……嫌いなヤツを追っかけて魔界くんだりまで行くと思ってんのか?」

「え…?」

ダイは一瞬呆けた顔になる。

「だから!へーきじゃねぇから探しに行ったんだろーがよッ!……ダメもクソもネェ!しょうがねーから……居てやらぁ」

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ぷいと明後日を向いたポップの横顔、その頬は熱を集めて鮮やかな朱に染まっていた。

「え…と、それってさっきの返事?」

それはまだ、望みがあると思って良いのだろうか。

先の冷たい拒絶を打ち消し拭って、ダイの胸の中に溢れ出し余りある幸福感。

思わずさっきの大惨事も忘れて、ダイはウッカリその程近い雲母の輝きに吸い寄せられそうになる。

その時すっと伸ばされたポップの右腕が、ダイの頭に回された。

そして、勢い良く引き寄せられ―――。

ダイの額に痛恨の一撃……ポップの頭突きが炸裂した。

「いったぁッ!!!」
「いってぇぇッ!!」

油断しきっていたダイと、
両刃の攻撃を仕掛けたポップは、双方暫し悶絶する。

「こんの石頭め!」

完全に逆恨みなセリフだが、
ダイはポップらしい何時もの変わりない態度に毒気を抜かれて、
赤くなった額をさすりながらダイは引っ込んだ涙の替わりに、苦笑した。

「いいかダイっ!側にいるのとさっきの件は話は別だ!……姫さんの事もきちんと考えろ」

「うん…レオナとは、話すよちゃんと」

「よし」

「だけどさ、俺やっぱりお前が好きだよ」

「!!」

「……ポップも今答え出さないで、考えてくれよ俺の事」

さっき様な、去るポップの冷たい拒絶の後ろ姿は、
ダイの心臓を今も冷たくする。二度と見たくない。

けれど、どうしようもないくらい、締め付けられる胸の切なさを抱いていることを、
ポップにはわかっていて貰いたかったのだ。

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じっとポップを見つめるダイの瞳の奥に、激情を抑え込みダイ本来の優しい思い遣りが宿っていて。
暫しそんなダイの目を見返しながら、読めない凪いだ表情のポップが崩れ。

「……ったく、わーったよ、この頑固もん」

乱暴な手つきでダイの堅い癖毛をかき回すように撫でつつ、口端は笑っていた。

そんなポップの照れ隠しに、緊張した心が緩むのを感じる。

「ありがとう、ごめ…」

もう一度謝ろうとした口をポップの右手が塞いだ。

「キリがねーからいい。それよりココ(研究室)をぶっ壊した事を、一緒に姫さんに叱られろよっ!」

「えっ?!…う、うん」

「何でそこは歯切れ悪ィーんだっ!?」

「だってレオナ怖い…」

「俺だって怖いっつーの!」

二人同時にレオナの鋭利な怒りの表情を想像してしまい、互いの情け無い顔を見合わせると…
ダイもポップもつい吹き出してしまった。

そうして暫し笑い合った後、ようやく何時もの自分たちに戻れたようで、
ダイは嬉しさに比喩でなく実際胸をなで下ろした。

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(ん?)

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「ねぇ、ポップ」

「んだよ?」

何だか微妙に眉をひそめ、困った表情でポップを見つめたダイが、自分の胸元を指差した。

「何か…変」

「なんだ?」

そうして二人の見下ろした体の間、ダイの胸板は見る見るうちに膨らみを帯びて、
衣服の釦がはじけそうなくらい立派に迫り出した。

「な、なにィ―――――っ!!?」

「俺にもおっぱいが生えてきた……」

暫し茫然としかけたショックからいち早く立ち直ったポップが、
べしりとダイの頭にチョップで突っ込む。

「生えたじゃねえだろ!何でお前が?!――――うッ痛ぇッ!」

驚きで飛び起き様としたポップは、足裏に鋭い痛みを感じて顔をしかめた。

「ど、どこか怪我した?」

慌ててダイがポップの足を見ると、靴底に硝子の破片が刺さっていた。

「大丈夫だ、こんなのホイミ程度で…」
そう言いつつポップは、足元に散らばる先程踏み砕いた瓶に視線を落とし……、
「うっぎゃああああああッ!!」

ダイの毛が逆立ち天地を揺るがす程大絶叫した。

「なっ!何っ?どうしたんだよ?」

「薬が…やべえ…」
「薬?本に戻る薬?」

「いや、ソイツは此処にある」

ゴソゴソと胸の谷間に指を突っ込み、小さなビンを摘み取り出してダイに見せる。

「何でそんなトコに…」

「男のロマン…、あ、じゃなくて!一番クッション性があんだろ?」

「あ…そう」

確かに、ポップのともすれば童顔な造りの表情とアンバランスな豊かな胸の谷間から、細長い瓶が出てくるの光景はちょっと刺激的だったが。

「兎に角…割れたこいつは、胸をデカくする方の薬だ」

他のアイテムは、あの爆発に巻き込まない様氷漬けで留めている。

ダイが来たときテーブルの物陰に隠したのが災いした。

「それでなんで俺までこんなになったんだろう?」

ダイは筋肉ではなく盛り上がった自分の胸元を、不思議そうに見下ろした。

ポップのように女顔な訳でないダイの凛々しい男性的な顔に巨乳は、
はっきり言って女装しているようで喜色悪い。

「うーん…何かを媒体して体内に入ったとしか…しかも即効性の筈のこの薬が発現までに時間がかかった事を考えると……」

竜闘気の暴発、
割れた瓶、
遅発の効果。

ポップは先程までの状況を正確に記憶の中で反復し、原因を探る。

その頬に、ぽたりと天井に開いた穴から、雫石が落ち掛かり頬を滑った。

「―――雨?!」

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ハッと顔を見合わせると、二人は慌てて立ち上る。

入口は瓦礫で塞がれていたので、二人は飛翔呪文を唱え屋根に開いた穴から外へ飛び出した。

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………パプニカ王国中は、天地を引っくり返したような大騒ぎになっていた。

それもその筈。

何せ国民の老若男女関係なく、

先ほどのにわか雨を浴びた者は、
巨乳になってしまったのだから………。

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「あ―…つまりだ、姫さん」

ごほん、と咳払いを一つしてから、
大魔道士ポップはパプニカ王女の執務室にて説明しだした。

「あの薬が有効か実験をしている時に俺がウッカリ揮発性誘爆の薬品をこれまたウッカリ零しちまって、全くの偶然に訪ねてきたダイがその爆発を竜闘気で抑え込もうとしてくれてよ、ドカーンとなった爆風に例の薬がパリーンって混ざっちまって、そのまま巻き上げられた塵が空気中で水分と結び付く科学反応で雨雲へ発展し、薬効成分を含んだ雨が……」

「ふーん、へー、そう」

豊かになった胸を支えるかのように腕組みしたレオナの、
じとりと重さを含んだ視線にねめつけられても、
長々と説明するポップはどこ吹く風で涼しい顔だ。
……表面上は。

「まったく、予想外よ」

「判ってる。直ぐにアンチテーゼ薬を調合して民間優先で配布する、それと各国への謝罪文に、それで駄目なら俺が出向く」

こんな珍事。隣国所か世界にあっとゆう間に広がるだろう。
外交的にも、政敵にはどんな不利になるやら、問題は山積みだ。

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「―――責任は取るよ」

「つまりはポップ君が全部原因って訳?」

「そんなの駄目だよ!!」

それまでポップの隣で黙って立っていたダイが声を上げた。
「俺の責任だよ!だって…」

「姫さん、コイツはほんとに偶々巻き込まれただけだ。―――な に も し ら な い か ら な」

嫌に其処だけはっきりと告げるポップの真意を、レオナは小さく頷く事で了承した。

つまりは、事の発端となったレオナがポップに依頼した秘密が、守られているとゆうこと。

「……とにかく、責任云々は一旦保留にして、ポップくんは事態の収拾にすぐ当たって頂戴。今はそれが先決よ」

「あ、あの俺は?何か出来ることあるかな」

レオナはそれを聞いて、
オロオロと二人を見比べていたダイの、その豊満になった胸を指差した。

「ダイくんはポップくんから今すぐ薬を貰ってもとに戻って頂戴!!色んな意味で目の毒だわっ!
それから被害に遭った兵達にも配布して来てねっ!それも直ぐ!!はい駆け足っ!」

「そうだな、頼むぜダイ」

「う、うんっわかった!」

ポップから薬の瓶を受け取ると、ダイは回れ右して扉からバタバタと走って出て行った。

ダイを追うように三賢者達も現場へ向けて退出し、
執務室にはポップとレオナの二人が残った。

「すまねぇ、大事になっちまって…だけど本当にダイは関係ねぇし、姫さんの秘密も言ってねーから」

流石に愁傷な顔をして頭を下げるポップを見ながら、
レオナは深い溜め息を吐いて静かに執務椅子から立ち上がると、
ポップの目の前まで優雅な脚運びで歩み寄った。

「ポップくん頭を上げて。私が君に言いたいのは只一つ」

怒りを湛えているかとポップが予想したレオナの、思いがけず柔らかな声色に。
ポップは顔を起こしその表情を伺いみた。

にーっこり、と美しく笑ってみせた後、
レオナは正面からいきなり、両手でポップの豊かに育った胸を鷲掴みした。

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「みんながみんなこうなっちゃたら意味ないじゃ無いの―――!ちょ…っなにコレっ?ポップくんの方が私より大きくないッ?!」

「言いたいのはソレかよっ?!ぎゃ―――ッ!!揉むなって姫さ―――――んッ!!!」

ポップの突っ込みだか絶叫だか判らない叫びが、城中に響き渡った。

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【後日談へ続く】

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ああ!何とかもとの軽〜いノリに戻ってこれました。
しんどかったっす。でも読んでる方の方が読み辛い文でもっとしんどかった筈……。スイマセン。

次でホントに終わりです。

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2009/4/14

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