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この部屋の話は、世界設定、性格捏造、文章崩壊、お馬鹿でたまに下品です。
キャラのイメージを壊したく無い方はお避け下さいませ。

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柴崎様よりリクエストいただきました。
【●っぱいがいっぱい】完結編です。

告白その後、ダイとポップがどうなったのか。

嫌に長くなり前編・後編になりました。柴崎様申し訳ありません〜。





結局のところ、どうせ逃げきれないならいっそ迎え撃ってしまった方が楽なのだろう。

だけどそれがまさかの決定打になるなんざ、
思いもよらなかった。

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 【●っぱいでしっぱい・前編】

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太陽光が西の山々の向こうに消え行く日暮れの刻、
ポツリポツリと蝋燭が灯り始めたパプニカ城の長い廊下を、
ポップは走り出すギリギリ最大限の早足で、ブーツの靴音高く闊歩していた。

目指すは王女の執務室。

あの恥ずべきおっぱい事件から早4ヶ月、
巨乳化したポップも従来の順応性から、早足にぽよぽよ揺れる胸にもすっかり慣れて…

「いやいや!慣れてない、無いッ!無いからなッッ」

ぶんぶんと首を振って何処かへ向かって抗議した。

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世間はやっと沈静化、巨乳雨の被害者も解薬希望者には配布も終了。

ポップは一刻も早く、元の

《どっから見ても立派な男》

に戻らなくてはならないと焦っていた。

その為には、今現在自分にこの姿を強いてる張本人に直談判あるのみだった。

重厚な造りの王の執務室扉前に立つ兵士が、ポップの姿を見て敬礼し道を開ける。

「姫さん、入るぜ!」

ノックももどかしく部屋に踏み込めば、レオナは執務机に頬杖をついて、
ぼんやりと目線も遠く物思い中だった。

「あらポップくん、今日の外交対応は終わったの?」

「あんなの!もう立て札書いて立てときゃ済むだろ!」

レオナの言う外交対応とは、巨乳になれる薬があると噂を鵜呑みにした来訪者達への説明をする事だ。
その人数もやっと最近無くなってきた。

「責任取るって言ったじゃない。本人の口から宣言するのが一番効果があるのよ、それに…」

ちら、と目はポップの胸元に移る。

「結構気に入って馴染んでるんじゃないのぉ?」

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「冗談じゃねぇ!こいつのせいで男に言い寄られるし、共同風呂にははいれねーし、肩は凝るわ、体は重いわ、もう沢山だッ!」

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「あらそう贅沢な悩みね―ご苦労さま」

対して労いのこもっていない抑揚の声で言いつつ、レオナはまた溜め息を吐いた。

「…?どうしたんだよ姫さん、元気ねぇな」

何時もならば一つポップが何か言えば、明朗快活なキレの良い言葉が切り返されてくるのに、
今日のレオナはどこか覇気無く沈んでいる。

「二日酔いか?」

そんなにアルコールに強くないクセに、執務へ影響が出るくらいワインを飲みすぎる事がある時は、
良い事があった時か、逆の時のみだ。

最近でこんな風になるレオナの姿は珍しい。

「……どうもしないわ」

レオナは心配顔のポップをちらりと横目で眺めた後に、
手元の小さい鍵付き引き出しの鍵を開き中から小瓶を取り出した。

それはポップがレオナに預けた豊胸の解薬液だった。

「はい、罰ゲームは終わり」

「ありがてぇ!」

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途端に目を輝かせる素直な反応に、レオナも思わず吹き出す。

「キミってこうゆうトコ本当に律儀ね、自分で薬作ってさっさと戻れば良かったじゃないの?」

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机上に置かれた小瓶を手に取り蓋を外すと、片手を腰にあててグビグビ一気飲みするポップを、
顎下に組んだ指を支えにしつつ見上げたレオナは少し微笑んだ。

「〜〜ぷはっ!」

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嚥下した途端に淡い燐光で包まれた身体に変異が起こる。

何時もポップが好んで身に付けている男性モノの濃緑色をした魔法衣が、今まで窮屈なくらい胸の部分だけせり上がっていたのだが、
見る見るうちに平坦さを取り戻して、
すっかり元の有るべき姿へと戻った。

「やっ……た!」

良い年の青年が自分の胸板をペタペタと探る姿は、
お世辞にもあまり褒められた様子で無かったが、
当の本人は感激に目尻に涙まで浮かべていた。

そんなポップの様子を見つつ、レオナは薬を取り出した引き出しからもう一つ、紙を取り出してピラリとポップに差し出した。

「ん?なんだよそれ」

「やあね、これが喉から手が出るほど欲しがったんじゃないの?」

不審に思ってポップはそれを手に取り良く見ると、
たちまちもともと大きい瞳が驚愕に見開かれて今にも飛び出しそうになる。

「こ…これっ!有給休暇届け書!!!」

確かに豊胸薬を分析する意欲を高めたのは、この休みの為に他ならない。

「い、いいのかよ姫さん?!」

「まあ好きなだけ、とは言えないけれど、一週間くらいなら私で何とかしとくわ」

もともと自分が変に焦って、薬などに頼ろうとしたのが間違いだとレオナは心中反省している。

しかしそれを素直にポップへ出せるには、プライドが邪魔をした。

だからせめてものレオナからの詫びなのだと、ポップも理解した。

「サンキュ!最高だぜ姫さんは!」

散々苦労した数ヶ月もころりと水に流して、何時もの明るい満面の笑みを向けるポップに、
レオナは少し苦笑した。

「どこに行くか決めてたの?」

「うんにゃ、だけど久々に遠出して前から調査してみたかった遺跡にでも潜るかな」

心は既に旅の空らしく、腕組みをしてプランを立て始めている。

「でも、いいの?」

「何が?」

「………ダイくんを誘わなくて。きっと一緒に行きたいって言うわよ」

「…あ」

浮かれた気持ちにいきなり氷を押し当てられた様に、ポップは我にかえった。

同時にここ数ヶ月、忙しさに追われたせいで、ダイとまともに話せてない事も重く心にのしかかる。
意識して避けたわけでは無かったけれど、何となく顔を合わせ辛かったのも確かだ。

何度となく脳裏にフラッシュバックするのは、
ダイの思い詰めたように寄せられた凛々しい眉根、
縫いとめるように真剣な強い瞳、

声変わりして重みと深さの増した声で告げられる、言の葉。

抱き締められた腕の熱さ……。

「もう…駄目?俺の隣に…居てくれないのか……?」

そう、必死な声色で囁かれた。

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このままはぐらかして居れる訳ではないだろう。

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「…まあ、休暇の事はゆっくり考えるさ」

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ひらり、と用紙を指先につまみおどけて笑って見せたが、
レオナの何か言いたげな顔は晴れていない。
しかしそこは責務者の責任からか、
一度伏せた長い睫の瞼を開いたその時には、影は潜み鎮められていた。

「姫さ…」

「いつ頃休むか決めたら早めに申告してね」

綺麗に微笑んだレオナは、それ以上のやり取りを不必要と切ったように見え、
ポップは開きかけた口を閉じる。

「…ああ、了解」

ポップも普段通りの何気なさを表しながらそう告げると、部屋を退出した。

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「どうしたんだ?姫さんは…」

腕組みをしつつ、自室へと続く廊下を歩む。

らしく無かった。

何かに思い悩み沈むような気配は、ダイが行方知れずになっていた五年の間には時折あった。

しかしこの一年は、真のレオナらしさを取り戻し充実した表情をしていたのに。
気丈な彼女が其処まで左右される事柄と言えば、
只1人の事だろう。

「ダイ…か?」

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二人が仲違いをしたことなど、ポップの記憶では一度たりと無い。
ダイ自身が元々大らかな性格だから、めったな事では喧嘩に成らないので、
レオナの我が儘や多少の無理難題にも、仕方無いというような笑顔で応えていた。

似合いの二人だとポップも思っていたのはつい4ヶ月程前まで、
まさかダイにポップ自身が告白されるとは、青天の霹靂で。

まだ…本当は信じられない。

だがレオナのあの冴えない様子から、
二人の間に何らかの事柄があったならば、
ポップも知らぬ存ぜぬで居られない。

「後でダイに聞くか…」

正直ダイの顔は照れの為に少し見ずらいが、
ダイは大事な親友だし、レオナは大切な仲間だ。

どちらにも笑顔でいて欲しいと願う。

「…よしっ」

ポンと一つ、手のひらを拳で打ち、妙案の閃きに一人うんうんと頷く。

そうして戻った自室に、先程の空き瓶やら書類の手荷物を一旦置いて再び廊下に出ると、
爪先きの方向をダイの部屋へと変え歩き出した。

緊急時や祭典などで駆り出されても無い限り、
騎士団長としてのダイも、城の閉門をする定時頃には外から戻る筈だ。

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「やっぱ、逃げてねぇでスッキリ解決させねーとな」

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独り言を自分に言い聞かせ、
今は平坦に戻った胸元へ右手を当てて、深く深呼吸した。

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【続く】

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2009/7/29

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