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【贈物・おまけ】
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さて、クリスマスの聖なる夜が明けた爽やかな次の日、
ある片田舎。
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一人の前途明るい若者の命は風前の灯火だった。
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「俺の安穏無事な日常の為に…消えてくれ北の勇者…」
「ポップくんッ!?何だいその口調っ!そしてどっかのラスボスみたいな薄ら笑いを浮かべつつ近寄るのは止してくれ!!」
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ノヴァは何故こんな事態になっているのか混乱状態のまま、
距離を取って家の壁に背を張り付かせつつ退路を探していた。旧知の友人をにこやかに迎え入れた筈の数分後、
平素整い淡麗な顔の笑顔は凍り付き、最早死相が見え隠れしている。相対しているのは、普段着としている緑の簡易な法衣を着た魔法使いポップ。
そのピっと立てた人差し指の先に点る小さな火種は、
とんでもない魔法力が凝縮されたエネルギーを発している。
口端を半月に引き上げ哄うポップの目はマジだ。「やだなあ、こいつはメラゾーマじゃなくて、只のメラだって」
(ぜっっったい嘘だ!!)
膝下が勝手に震えだすのを気合いで踏み堪えたのは、流石ローカルと言えど勇者を張ってただけはある。
「ああそれともメドローアに似せたベギラマの方がいいか…?」
このままでは確実に助からないと踏んだノヴァは、
打開の為に必死で原因を考えた。ポップがこんなに変貌するのは、ダイに関する事以外には有り得ない。
そのダイは昨日、完成した例の指輪をノヴァから受け取り、ついでに渡す時のレクチャーも受けニコニコと帰って行った。
つまり、今日のこの事態はそれに関係している可能性が高い。
「も、もしかして昨日ダイくんから指輪を貰ったことでかい?」
途端にサッと朱がさした頬と、背に隠した長手袋の左腕はわかりやすいほど肯定を示している。
「デザインが気にいらなかったとか、サイズが合わなかったとか?材質はダイくんが直々にキミの為に探してきたんだよ?」
言葉を募らせればその度益々赤くなって、
耳から首まですっかり血色が巡ったポップは、耐え切れないように声を上げ遮った。「その事!他の誰にも言うんじゃねぇぞ!!もし言ったら…」
そう凄んで自称メラをちらつかせつつ一歩二歩詰め寄るポップに、
ノヴァは焦ってつい口走ってしまった。「まっ、待ちなよポップくん!ボク一人であの指輪が完成したと思ってるのかい?!」
「何ィ、どうゆうことだ?」
「材料は特殊素材だよ?探すには大変だった」
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「…まさか!」
「幸いオリハルコンの探知が出来るヒムくんを知っていたから、捜索を依頼したんだよ」
ダイとノヴァが二人でデルムリン島を訪ね事情を話したら、
結構気の良いオリハルコン戦士は二つ返事で頷いた。「ヒムくんがくれば当然のようにネズミくんも、最近体がなまってるからって言うクロコダインさんと付いて来たし」
「!!!」
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「そ、それだけじゃないよ!旅の途中でヒュンケルさんとラーハルトさんに会ったら、ラーハルトさんは「ダイ様の為なら必ずや命に代えでもって見つけるのだ!」とか燃えちゃって付いて来たし」
「!!!!!」
「見つかったのがバプニカ領土に属する場所だったから、一応レオナ姫に許可を頂きに行ったら当然理由を追求されて、ヒュンケルさんが正直に答えちゃうしもれなくエイミさんも加わるし、加工段階には先生やジャンクさんの力もお借りしたし」
「☆△●×◇〜〜〜〜〜〜ッ!!!!!!!」
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「いいじゃないかもうみんなが知ってるんだ!それともキミは世界を敵にするつもりかいッ?!」
ヤケクソ気味に言い切ったノヴァの眼前にて、
衝撃的事実にこれ以上無いほど後ろにのけぞっていたポップの、
細い顎が小さく震えている。..
「…………ふ。」
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「ポップくん……?」
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「ふはははははは世界を滅ぼして俺も滅んでやるぅ――――!!!!!!」
地を這うドス声で高笑いしたポップの両手からは、灼熱の業火が火山の噴火の如く炎上した…!!!
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………斯くして最強にして最凶な大魔王ポップが、
ランカークス外れの森の小さな小屋から爆誕したかというと。ただ事でないオーラを感知し翔けつけたた竜の騎士による命掛けの体を張った説得に制止され、
奇跡的に工場兼家を一軒消し炭にしただけで被害は沈静化。世界は未曾有の大危機から救われたのであった。
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【終わり】
. 2010/1/8 . (ブラウザの戻るでお戻り下さい。) . . . .