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【まごころを、君に】

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「うぁ、すげぇな」

宝石箱に山と積まれた眩い輝きに、
ひゅう。と下品な口笛を吹いてしまって、レオナにジロリと針みたいな視線で刺された。
「これどうしたんだい?」

「どうしたもこうしたも無いわ」

ぴら。差し出されたのは過程に装飾が施されたピンク色のカード。
ポップは好奇心にそれを受け取り、読み上げた。

「親愛なる姫よ、これ等の宝石が幾ら寄せ集めても、貴女の瞳の耀きに到底及ばない。
よって全て貴女を飾る引き立て役としてお贈りいたします。
私の元には真実貴女の耀きが在れば幸福なのです―…ぶはッ」

先はまだまだ綴ってあったが、其処までがポップの限界だった。

ここが王家の執務室とゆうことも忘れて、ポップは身体をくの字に折って笑い出した。

それを見て、レオナも自分が王女とゆうことも端に追いやってポップに文鎮を投げ付けた。
見事頭にクリティカルヒットする。

控えていた三賢者のアポロが代わりに痛そうな表情をした。

「つ、つまりあれか、求婚の贈り物って訳だな」

まだ笑いの発作に苛まれながら、ポップは痛む頭を擦ってレオナにカードを返す。

「要らないわよ燃やしといて」

望みのままにギラの閃光で空気中に灰と散る暑苦しい手紙を眺めて、

「うーん、良かったのか?」
粗末に扱って。
ちらと横目でキラキラ自己主張する宝石達を眺める。

「何ならその中から、好きなの持っててちょーだい」

残りは街に学校を造るのに使うから、と
隣国処か世界中から引く手あまたに求婚を寄せられる美姫はすげなく言い放った。

「いや、要らねーよ」
肩を竦めてポップは皮肉に笑った。

自分が纏うのは、衣服の下にある唯一の輝石で充分と、暗に答える欲が有るのか無いのか良く解らない大魔道士を、
レオナもアポロも好ましく見詰める。

「でも、ロッドに使う宝玉に一つ何か贈らせて頂戴、ね?」

貴方すぐロッド壊すし。

とレオナは片目を綴じて微笑んだ。
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実際、ポップの扱うロッドは壊れやすい。

それは無茶な使い方をしたからとゆうより、ポップの使う魔法の強さと、魔力の大きさに耐えきれ無いのだ。

その為しょっちゅうランカークス近くの森に寄り、ノヴァに新しい杖を頼んでいる事も知っていた。

かと言って、そうそうポップの魔力に耐えうる力在る宝玉が調達出来る訳もなく、在ったとしてとても値段が張る。

財布と相談し何時もランクが下回る宝玉で代用している為にやっぱり壊れやすい…そんな悪循環だ。

「う〜でもな」

人への贈り物を、自分が例え一つだろうと貰っていいものか…。

他の事なら何時もは遠慮なんかしない癖に、まだ悩んでいるポップを見て、
レオナが何やら思い付いた様に、ニコリと微笑した。

「ポップ君に合う石を私が選んであげるわ」

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「か、構わねーって」
慌てるポップを完全無視して、レオナは嬉々としながらよみどりの宝玉を物色する。

「うーん、ここは定席通りエメラルドかしら…でも綺麗な濃淡ならマラカイトよね、
ポップ君の精神に合ってる気がするし…あーでもジェードも捨てがたいわ」

先程と打って変わって生き生きするレオナに、ポップもアポロも仕方無いとばかり肩で息を吐く。

僅か17才の少女の肩に掛かる、国政とゆうストレスの鬱憤を晴らす手伝いになるなら、
多少の我慢は致し方無い。

その時、

箱の隅から一粒、零れ落ちた輝石に、
ポップの瞳が何気無く向けられそして吸い寄せられた。

「これ…」

拾い上げ、日に透かす。

「あら、石の方からポップ君に近寄ったみたいね」

その手の内でキラキラと耀く石を、レオナは少し悔しそうに見詰めた。

「この石が俺を選んだのか?」

「そうよ、大事にしてね」

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僅か、躊躇するポップを笑顔で封じ込めレオナは言い渡した。

「多分、貴方にピッタリね」

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数日後、新たなロッドを手にしたポップが、何時もの様にダイの捜索へ旅立った。

鮮やかな蒼の宝玉。

ラピスラズリは、
長らく旅の終わりまでポップの身を守り抜いた。
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【終】

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2008/7/29

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