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ダイを探し回る五年間のなかで、
ポップにとってのダイへの思いはより深く、
濃いものへと変化していった。
何処とも知れない場所にいる相手を宛てもなく盲目的に探す。
狂おしいほどその姿を声を存在を、
心配と焦燥と一緒に胸に住まわせながら彷徨う。
友愛には過ぎた執着。

ポップも自分で自覚している。

「でも止められねーよ」

其れほどまでに大切な相手なのだと、ダイならばそれも致し方無いと、
自笑めいた言い訳が胸にある。

言い訳の相手先はかつて好きだと告げたマァムだったり、
同じようにダイを想うレオナだたり、
こんな自分を好きだと言ってくれたメルル等だ。

想うだけならば。
罪ではないだろ?
世界で一番自分がダイを捜し求めている。
どんな危険な場所にだって無茶をして赴いた。

期待しながら何度も空振りだったときは哀しくて、苦しくて、
でもダイに対して此処まで出来る人間は自分だけだろうと、幸せで。

そんな自虐的な喜びさえポップは胸に抱く。

魔法力を使い果たし、瀕死の重傷を負ったことも、両の手では足りないくらいある。
ズタボロな姿で何とか生還して倒れる自分を、
その度本気で怒りながら心配するレオナはもしかして

こんな卑怯なポップの気持ちに薄々気付いているかも知れない。

一国の王女と言う責務があり、其れを蔑ろに出来ない強く賢い彼女は、

心のまま自由飛び廻りダイを求めるポップを心底羨ましく、そして妬ましく思っていた筈だから。

でもポップが首尾よくダイを見つけて凱旋しても、
その思いを告げることは無いとも感じているだろう。

ポップが人との関わりを壊れるのを何より恐れていることを、
知っているから。

無論、そのつもりだ。

例え再びダイの隣に勇者の魔法使いとして並び立つ日が来ても。

自分は笑って偽りの友愛を語ることが出来る。

レオナとダイが連れ添って幸せになることは、
ポップにとって一つの願いでもあるからだ。

だけど今だけは、

ダイを求めてさ迷う間は。

ダイは自分のものだと想う。

せめてそれ位は赦して欲しい。

いつか来るこの独占欲が壊される日まで。

・・・・密やかな幸福。

終。




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2008/6/2

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