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季節は初夏、午後のやや強い陽射しも、豊かに繁る緑に和らげられて、
テラスのテーブルに向かい合い座る、レオナとポップに優しく届く。

「で、早速聞かせて貰おうかしらこの一年の事」
「ああ、パプニカからまずロモス辺りまでの怪しい所を」
「違うわよ」
「へ?」
「マァムとメルルとはどんな感じに進展したのかって事よ〜」

「ひ、姫さーんっ」

「ウッフッフッどーなのぉ?白状なさい」

おおよそ王女としてのレオナを知る国民には到底見せられないようなにまりとした笑顔の、
下世話な美姫の質問に、ガックリとポップは首を項垂れた。

「てっきりダイの事を聞きたいんだと思ったんだぜ?」

「あらそんなの、もし手掛かりなり、本人なりが見つかったなら」
パプニカ山陸産の香り強い紅茶を口に運ぶ。
「その時にポップ君は直ぐ報せに来てくれるでしょ」
「まあな…」
「しかもそんな浮かない表情してるんじゃ、結果は判るわ。
だから、別の成果を聞かせてよ」
「別の成果ってなー」
目線をテラスの外に広がる整えられた庭園に泳がしながら、
ポップは困ったように人差し指で顎を掻いた。

「何も変わらなかったから、それこそ取り立て話す事もないぜ」

「まさかポップ君ッ」
「な、何だよ」

「貴方達、ただ仲良く普通に一年過ごしたって言うわけ?!」

「う…」

「バカねーっ両手に花の、それこそポップ君の人生にもう一度あるかないかの最高シチュエーションなのにッ
信じらんないッ!!」
「おーい、何気に酷いこと言ってんぞ」

「言うわよ、全く。ポップ君てスケベなふりして奥手よねー」

あんまりな言われように、流石にポップもムッとして。

「て、手ぐらい握ったぞ!」

余計な情報を洩らしてしまった。
「今時手ぐらい幼稚舎の子達だって握るわよ、大方其だってダンスとかそうゆう時だったとかでしょ」

大当たり。

「ううう…」

「なーんだ。今日二人が一緒じゃないから、何か決着付いたのかとわくわくしたのに、つまらないの」

「悪かったな!つまらなくて。
…マァムのお袋さんが、具合悪いって報せが入ったから、一旦解散したんだ」
「えっ?お母様が?」
「ああ、俺も立ち寄って回復呪文とか手持ちの薬湯が効くかどうか試したんだがよ」

首を横に振る。

「あれは魔法を使う人間特有の症状でさ、
限界超えた使い方した反動が今来てるんだ。
お袋さん、先生達とパーティ組んでた時相当無理してたんじゃねぇかな…」

手の出せない歯痒さで、ポップの表情は悔しげに歪んで、
それを隠すように手元の紅茶を一気に煽った。

「そうなの…」

レオナはそんなポップを静かに見つめた。
彼のもう1人の師匠も、今同じく禁呪の反動に体調を崩し寝込んでいる。
ポップがそれを治す手立てを、誰にも言わないが探している事も知っていた。

そして、これはレオナの推測ではあるが。

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ポップもまた、
その身体を蝕まれている…。

「ただ救いはよ、今後魔法を使わずに、きちんと養生すれば大丈夫な程度で治まりそうって事だな」

大丈夫、大丈夫。

努めて明るい声を出して、ポップは沈んだ空気を払うように大きく伸びをした。

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【続】

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2008/7/11

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