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.ぼんやりと意識が浮上してきた。
額の上に何かがのせられているのに気付く。
生温くなったそれを、近くにいたらしい誰かが取り上げた。
解放感に軽く息を吐く。

ささやかな水音のあと、再び額にのせられたものから、心地好い冷たさ。

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あー。
俺、熱出てんのか……。

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少しずつ頭がはっきりしてくるにつれ、自分の状況を理解する。

今日は休みだったから、仕事の方は大丈夫のはずだ。
だが……。

溜め息をついて、重い目蓋を持ち上げる。
まだ俺が寝てたからだろう、閉じられたままのカーテン。
漏れてきている日差しの角度を見ると、もう昼に近い時間帯かもしれない。

「……ダイ?」

視界にはいなかったが、きっと近くにいるだろう相手を呼んでみた。
寝起きというだけの理由ではなく、声はひび割れかすれていて上手く音にならなかったけれど、ダイはすぐに気付いてくれたらしい。

「ポップ起きた?具合どう?はい、お水。飲める?」

とたん、矢継ぎ早の質問攻めには苦笑い。
ゆっくり体を起こそうとするのを手伝い、クッションで背もたれを作って寄り掛からせ、額の濡れた布を外してくれてから、コップを渡す。

前に一度、俺が熱を出したときには、どうしたらいいかわからずオロオロしてた奴と本当に同一人物だろうか?
これでもかとかいがいしく世話を焼いてくれるのは、助かるのだが、若干子供に戻ったみたいでこそばゆい。

水を飲み干して、ゆっくり息を吐き出した。
心配そうに曇った表情のダイと目が合う。

今日は、二人で一緒に遊びにいく約束をしていた。
…ダイはものすごく楽しみにしてた。
それだけに、自己管理不足が悔やまれる。

「…悪ぃな」

しまったなぁ、という気持ちはあるが、ついへらりとした誤魔化しの笑みを浮かべてしまう。

なかなか、素直に謝れないのは昔から。

そんなこと全部わかってくれちゃってるダイは、いちいちそんなことで怒ったりはしないが。

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「今朝、ポップが起きてこないからって様子を見に来たら、すごい熱でびっくりしたよ。少しはさがった?」

コップを受け取りながら、ふっと顔を近づけてきた。
コツン、と額がぶつかる。

「ん、やっぱりまだ熱いや」

てっきり、そのまま離れていくだろうと思っていたら、速攻、ちゅ、と唇に。
「ばっ…!!」

油断したっ。

ただでさえ熱があるっていうのに、さらに熱が上がるようなことするなよな!
にらみつけたが、ダイはイタズラ成功!という笑みを浮かべてどこ吹く風。
クッションをずらして、元通りに寝かせられた。

「…風邪が感染るだろうが!」

ようやくそれだけ言い返せたが、

「平気だよ。それに、もし俺が風邪ひいたら、その時はポップが看病してくれるだろ?」

さも当たり前のように言われてしまった。

実際その通りなので、ぐっと言葉に詰まる。

しゃべりながらでも手は動いていて、再び額に冷たい布がのせられた。

ふと気付いた。

「氷?」

以前は、確か自力で氷をつくって、後のことをダイに任せたんだったが。

俺の疑問点に即座に気付いたらしい。

「これね、今回はちゃんと俺が作ってきたんだよ!

ポップみたいに、何もないところから氷は作れないけど、水だったら凍らせるくらいの魔法は使えるから」

どうやら、水を汲んできて、外でヒャドでもかけたってことらしい。
若干周囲まで凍ってしまっただろうが、この季節ならすぐ溶けるから問題ないだろう。

「ありがと、な」

おもいがけず、すんなりと素直な言葉がこぼれ落ちた。

「はやくよくなってね」

ニコリ、と笑ってかえされた。

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【終わり】


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なんと風邪を引いてる時に、うたげさんから特効薬SSをいただいたんですよ!

ナチュラル同棲中な二人のお話ですvvvv

一生懸命ポップを心配するダイが、かーわいいー!
速攻のちゅうvが堪らなく好きで、ど真ん中きゅんきゅんきました〜。

そして、照れつつちょこっと素直になるポップもラブリーですv。

本当にありがとうございました!

〉ルドルフ

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2009/9/9

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